キエフへの列車で ― 2009/08/07 02:08:25
TJ先生にさよならをし、キエフへと向かうための鉄道駅に着いた私は心細かった。
そりゃそうですよ、ロシア語が出来るわけでもなし、外国を旅するのは初めてだというのに、無謀にも1人旅なのですから。
一気にどっと不安が押し寄せてきた私に、インツーリストの係員が「このコンパートメントに乗りなさい」と指示をする。間違いなく私をそのワゴンに押し込めると、ここで決まり文句。
Have a nice trip.
そういって、列車が出るまで見送るわけですが、これで担当者は責任遂行完了です。
これからの旅に期待もあるものの、不安のほうが大きかった私は、ロシア人ばかりのコンパートメントで、物珍しそうにじろじろ見られながら、小さくなっていた。実際、キエフまでの、長い道中のなか、いろいろありました。
やがて、広大な平原の中の駅に着くたび、1人2人と、下車していき、いつしかコンパートメントに残ったのは、出発以来、一番私のことを毛嫌いしていた20代とおぼしき若きロシア青年。
お菓子などをまわしても、絶対に、もらってくれなかった。「そんなもん、いるか!!」といわんばかりに、はらいのけられました。この青年をのぞく他のロシア人の同室者たちは、「もっとほしいんだ。家で待っている家族の分ももらっていいか?」といったほどで、この青年とはまったくの正反対。
でもこの青年、ロシア人同士での、持ち寄りのお菓子を交換するのには、こころよく応じているので、要するに、私だけが拒否されていたわけですね。
思うに、私が気に入らなかったのか、私が配ろうとするお菓子などが、彼らの祖末な食べ物(茶色の紙でくるんだパンとか、形も色も悪い、見た目は粗悪品にみえるようなお菓子など。むろん、包装なし)に対して傲慢に見えたのか、とにかく、私が気に入らなくて、無視状態。
それなのに、どうしてこの人と私だけが、まだ下車せずに乗ってるの〜と、ますます憂鬱になった私は、どうしていいかもわかりませんし、まだまだ目的地キエフまでは長いので、ここは1人旅の気分を満喫すべしと、彼の存在を忘れることにしました。
で、移り行く車窓の景色を、ただただ飽きることなく、眺めつづけていたのですが、あるとき、車内販売のワゴンが、わたしたちのコンパートメントに声をかけました。
私はちょっと笑って「けっこうです」と手で合図。
すると、この青年、チョコレートをひとつ、といって、買いました。
その光景を見届けたあと、私はまた、窓の外に視線を投げようとしたのですが、おもむろに、目の前が、大きな板チョコでふさがれました。
びっくりして、我に返ると、無愛想な青年が、無愛想な顔のまま、私にチョコレートを差し出しているのです。
おもわず私は、「スパシーバ」といって、受け取りました。
そして、お返しに、私の持っているお菓子(彼にとっては珍しい外国のお菓子ということになる)を差し出すと、はじめて、抵抗もせず、ニヤッと笑ってもらってくれました。
それからは、キエフまで、楽しい時間になりました。ただし、私はロシア語は話せませんし、彼は、ロシア語以外、いっさい理解しません。そこで私は彼に、ロシア語の数の数え方を習いました。日露辞書を手でさししめしつつ、私がこれからフランスまで行こうとしていること、そこで、大学に行くつもりでいること、などなどを話し、彼は、自分の好きな音楽のことなどを話してくれました。
途中で下車していった、隙あらばセクハラじみたことをしようとした愛想だけはよかった変なおじさんとは違い、親しくなってみれば、とてもマナーのよい清潔な青年でした。
とうとうキエフに到着。列車が止まったかと思ったら、もう、私たちのコンパートメントの前には、この地での私の担当となっているインツーリストの女性が立っていました。
係員に名前を確認されて、返事をしたりしているうちに、彼は、さっさと荷物をまとめ、さよならもいわず、降りていってしまいました。
そう、レニングラードを出発したばかりの、固いかたくなな表情の彼に戻ってしまったような態度で。
おもわず私が、さよならぐらい言いたかった、といわんばかりの顔つきで、彼の後ろ姿を見送っていたら、ふりむいてくれました。そして、打ち解けて楽しかった時の笑顔で、でも、ちょっとニヒルを気取ったような仕草で、手を振ってくれました。
車内でいっしょにとった写真を、パリで焼き増しをし、ロシア語の手紙文例などを参考にしながら、彼のソビエトの住所に送ると、その後しばらくして、返信がきました。理解不可能な英語で・・・
でも、彼の気持ちがわかったような気がして、ほっんとうに嬉しかった。素敵な、青年でした。
ブロンドで青い目、背が高く、そして清潔なかたくなさを持った・・・・
そりゃそうですよ、ロシア語が出来るわけでもなし、外国を旅するのは初めてだというのに、無謀にも1人旅なのですから。
一気にどっと不安が押し寄せてきた私に、インツーリストの係員が「このコンパートメントに乗りなさい」と指示をする。間違いなく私をそのワゴンに押し込めると、ここで決まり文句。
Have a nice trip.
そういって、列車が出るまで見送るわけですが、これで担当者は責任遂行完了です。
これからの旅に期待もあるものの、不安のほうが大きかった私は、ロシア人ばかりのコンパートメントで、物珍しそうにじろじろ見られながら、小さくなっていた。実際、キエフまでの、長い道中のなか、いろいろありました。
やがて、広大な平原の中の駅に着くたび、1人2人と、下車していき、いつしかコンパートメントに残ったのは、出発以来、一番私のことを毛嫌いしていた20代とおぼしき若きロシア青年。
お菓子などをまわしても、絶対に、もらってくれなかった。「そんなもん、いるか!!」といわんばかりに、はらいのけられました。この青年をのぞく他のロシア人の同室者たちは、「もっとほしいんだ。家で待っている家族の分ももらっていいか?」といったほどで、この青年とはまったくの正反対。
でもこの青年、ロシア人同士での、持ち寄りのお菓子を交換するのには、こころよく応じているので、要するに、私だけが拒否されていたわけですね。
思うに、私が気に入らなかったのか、私が配ろうとするお菓子などが、彼らの祖末な食べ物(茶色の紙でくるんだパンとか、形も色も悪い、見た目は粗悪品にみえるようなお菓子など。むろん、包装なし)に対して傲慢に見えたのか、とにかく、私が気に入らなくて、無視状態。
それなのに、どうしてこの人と私だけが、まだ下車せずに乗ってるの〜と、ますます憂鬱になった私は、どうしていいかもわかりませんし、まだまだ目的地キエフまでは長いので、ここは1人旅の気分を満喫すべしと、彼の存在を忘れることにしました。
で、移り行く車窓の景色を、ただただ飽きることなく、眺めつづけていたのですが、あるとき、車内販売のワゴンが、わたしたちのコンパートメントに声をかけました。
私はちょっと笑って「けっこうです」と手で合図。
すると、この青年、チョコレートをひとつ、といって、買いました。
その光景を見届けたあと、私はまた、窓の外に視線を投げようとしたのですが、おもむろに、目の前が、大きな板チョコでふさがれました。
びっくりして、我に返ると、無愛想な青年が、無愛想な顔のまま、私にチョコレートを差し出しているのです。
おもわず私は、「スパシーバ」といって、受け取りました。
そして、お返しに、私の持っているお菓子(彼にとっては珍しい外国のお菓子ということになる)を差し出すと、はじめて、抵抗もせず、ニヤッと笑ってもらってくれました。
それからは、キエフまで、楽しい時間になりました。ただし、私はロシア語は話せませんし、彼は、ロシア語以外、いっさい理解しません。そこで私は彼に、ロシア語の数の数え方を習いました。日露辞書を手でさししめしつつ、私がこれからフランスまで行こうとしていること、そこで、大学に行くつもりでいること、などなどを話し、彼は、自分の好きな音楽のことなどを話してくれました。
途中で下車していった、隙あらばセクハラじみたことをしようとした愛想だけはよかった変なおじさんとは違い、親しくなってみれば、とてもマナーのよい清潔な青年でした。
とうとうキエフに到着。列車が止まったかと思ったら、もう、私たちのコンパートメントの前には、この地での私の担当となっているインツーリストの女性が立っていました。
係員に名前を確認されて、返事をしたりしているうちに、彼は、さっさと荷物をまとめ、さよならもいわず、降りていってしまいました。
そう、レニングラードを出発したばかりの、固いかたくなな表情の彼に戻ってしまったような態度で。
おもわず私が、さよならぐらい言いたかった、といわんばかりの顔つきで、彼の後ろ姿を見送っていたら、ふりむいてくれました。そして、打ち解けて楽しかった時の笑顔で、でも、ちょっとニヒルを気取ったような仕草で、手を振ってくれました。
車内でいっしょにとった写真を、パリで焼き増しをし、ロシア語の手紙文例などを参考にしながら、彼のソビエトの住所に送ると、その後しばらくして、返信がきました。理解不可能な英語で・・・
でも、彼の気持ちがわかったような気がして、ほっんとうに嬉しかった。素敵な、青年でした。
ブロンドで青い目、背が高く、そして清潔なかたくなさを持った・・・・
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://miki.asablo.jp/blog/2009/08/07/4485378/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。